約 514,077 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/269.html
第2話 好きなものは? それまで武装神姫というものを知らなかった俺は、あちこち調べてみた。 神姫にも好き嫌いがあり、バトルしたがるのとか、服で着飾りたいのとかが居ること。 それらの性格の違いが、本体に登録されている基本性格とCSCの組み合わせで生まれるということ。 驚いたことに、食事もできるらしいということ。 そして、しばらくたったある日のこと。 その日、俺は予定よりも早く帰ってこれた。 手にはアールが好きだと言った食べ物の入った袋がある。 自室の前に立つと、中から音楽が流れているのが聞こえてくる。 アールが音楽が好きなことが分かり、プレイヤー類は自由に使っていいと言ってある。 せっかく楽しんでいるアールを邪魔しないように、ドアをそっと開けて中に入る。 俺の机の方に目をやると、そこで釘付けになった。 歌を聴いていると思っていたのだが、現実は予想のはるか上だった。 プレイヤーから流れる歌に合わせてを口ずさみ、器用に踊るアールの姿がそこにあった。 金色の髪をなびかせ、腰をぷりぷり振って手足でポーズを取って踊るアールに俺は見入ってしまった。 (可愛いもんだな) そう思っていると、アールがターンをしてこちら側を向く。 「あ」 「あ」 アールと俺の目が合った。 すると、アールの顔がみるみる赤くなり、小刻みに震え出した。 「み、みてたんですか?……」 「あ~……うん、可愛かったよ」 にっこりと微笑んでやると、アールの目に涙がたまりだす。 俺は涙を流す技術に感心すると、アールは側に置いてあったレーザーキャノンを持ちこっちを涙目で睨む。 「マスターのばかぁぁぁぁ!!」 そう叫ぶと、LC3レーザーライフルを乱射してきた。 神姫用に作られた武器類は、人間に致命傷を与えることは無いといっても、結構痛い。 「おい、こら。やめろ」 レーザーライフルを取り上げ、アールを握って暴れないようにする。 「ふぇぇぇぇん」 俺の手の中で顔を両手で覆って泣いている。 「落ち着けって、泣くなよ」 反対の手でよしよしと頭を撫でてやると、ゆっくり泣き止んできた。 「落ち着いたようだな」 撫でるのをやめて、机に座らせてもアールは顔を覆ったままだった。 「いつも踊ってるのか?」 アールに問い掛けると、ビクンとなった。 「ああ~、無理に言わなくてもいいよ」 「……マスターに」 「うん?」 手で覆いながらもアールはゆっくりと話し始めた。 「マスターに見られないように、見られたくなかったから……帰ってくる時間には終わらせてました」 「どうして? アールの踊り、可愛かったよ。俺は見てみたいな」 「恥ずかしいんです!」 アールは覆っていた手をどけてこっちを見たが、顔は真っ赤のままだ。 「だって……こんなのが好きだなんて」 「いいんじゃないか? それは、アールがアールだっていう証拠なんだし」 「え?」 「神姫にもいろいろ好みがあるってことさ。だから見せて欲しいな」 「マスターは、わたしを嫌いになりませんか?」 少しおびえた表情で見つめているアールの頭をなでた。 「どうしてそう思う?」 「だって……」 「むしろ、もっと好きになったよ」 「マスター」 今度は別の意味で顔を赤くするアール。 「しょ、しょうがないですね。マスターがそう言うならみせてあげます」 顔を真っ赤にしてそういうアールをにっこり笑って答えた。 「ところで、さっきの歌はなんだ?」 「はい、私の好きなたいやきの歌です」 「そ、そうか……たいやき買ってきたから一緒に食べよう」 袋を持ち上げてアールに見せる。 「はい!」 輝くような笑顔でアールが返事した。 俺は存分にアールの踊りをし、買ってきたたいやきを二人で食べた。 たいやきを食べていると、突然アールの顔が般若のようになり、俺の方を向く。 「マスター! これ、尻尾まであんこが入っていません!」 「え?」 「マスター、いいですか? たいやきというのはですね…………」 このあと、たいやきについて延々とお説教されるとこになりました。 アールの新たな一面がみえたと同時にちゃんと選んでたいやきを買うことを誓いました。 TOPへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1265.html
花は、散り逝く瞬間が最も美しいという。 例え我が家の燃える姿であろうと、巨大な炎に人は惹かれる。 兵器は、破壊される瞬間、最も誇らしいと謳われる。 死に幻想を抱く人間は尽きない。 崩壊、それは美しきもの。 降雨、流雨、冷雨、泪雨。 「しゅーこちゃん、だって、つーが大好きだと、みんな、壊ちゃうですよ? それなら、つーが壊れた方が、まだ・・・」 「ツクハっ!!」 どうしてこうなる?誰が悪い?何が悪い? 泣きそうに問いかけても、誰も答えない。雨がツクハを虚ろにしていく― 第2章 月下美人 「・・秋子、それでさ、その変な神姫、一昨日も昨日も夕飯にまで居座ってさ、人の作ったご飯に文句ばっか言うクセに殆ど食べないし」 「神無・・、神姫とは言え、そんな怪しい人をほいほい家に上げていいの?」 「・・・いや、そうなんだけどぉ、番犬代わりのロウが懐いちゃってるもんだから追い出すに追い出せなくて」 神無の話を要約すると、一昨日の騒ぎの後、家に帰るとその見知らぬ神姫が主人も連れず我が物顔で居座っていたという事らしい。しかもそれから毎日来ているという。 「それで、結局その神姫は何者なの?」 「さあ? ロウが言うには“先生”なんだって。でも何教わっているかは秘密だっ!って言って教えてくんないし。あいつ最近ナマイキなんだから」 「じゃあ、誰の神姫なのかも判らないの?」 「あ、それは八木内科だって」 「隣町の? そういえば、最近賑やからしいって聞いたけれど・・その神姫の事かな?」 「多分」 兎にも角にも、私の親友はまた面倒事を抱え込んでしまったみたいだ。 「ねえ、ところでさ、この前言ってた秋子の神姫ってなんて名前なの?」 「何? 騒がれたら、神無も武装神姫に興味が沸いたの?」 「いや、そういう訳じゃないよ。ただ秋子が連れてる娘ってのが、気になっただけ」 「・・・まあ、いいわ。でも、少し覚悟してね」 「へ?」 放課後の教室には静かだった。それでも少し前までは、神無に神姫の事を聞きに来た男子達が居たけれど、あまりのしつこさに激怒した神無に気圧され、今はもう誰も残っていない。一応もう一度周囲を確認して、鞄に手をかける。 「ツクハ、起きて」 「・・ふわぁ~。あれ? しゅーこちゃん、もう家ですかぁ? それともまたあの犬ヤロー?」 鞄から這い出る小さな影、眠そうに目を擦る。白緑色の髪、緑系で統一されたボディカラーのジュビジータイプ。それが私の神姫、ツクハ。 「え・・・これが秋子の神姫? っていうか真面目な秋子が学校にこんなの持ち込んでたなんて・・・」 「事情で、家に置いていたくないの。ツクハ、ここはまだ学校。友達が貴女に会いたいって言うから起こしたの」 「え!? 友達って、もしかしてカンナちゃん!?」 「あれ? アタシの名前知っているの?」 「うん! しゅーこちゃんの友達で、しかも美少女の名前、忘れるわけ無いですよ! 初めまして! つーはツクハです! お友達になって欲しいです♪ てゆーかお友達から初めてねです♪」 「え? あの・・うんまあ」 「こら、ツクハ。神無が困っているからそれ位にしなさい。神無、これが言い辛かったから隠していたのだけど・・・」 ツクハは限定品カラーらしいけれど、普通の神姫と変わらない。ただ、一つを覗いて。それは・・・ 「ツクハって、女の子好きなの、ものすごく」 「れ、れずっこ!?」 「うんっ♪ あ、でもつーのはプラトニックだから安心です♪」 「いやどう安心なの、それ」 ツクハの“左手”に振り回された神無の右人差し指が、困惑して語る。無理もない。私もツクハには振り回されっぱなしなのだから。 「あれ? もしかしてそれが法善寺の神姫? 学校に持ってくるなんて勇気ある!」 「わっ!? いつの間にいたの!?」 「あ、相原君・・・」 突然飛び込んできた笑顔。動揺してしまう。しどろもどろに言葉を見つけられずに居ると、急にツクハが躍り出て、“右手”で彼を指差す。 「あ~!! もしかしてうちのしゅーこちゃんをたぶらかそってゆーのです!? しゅーこちゃんは渡さないですよ!」 「ちょ・・ちょっとツクハ!」 「な、なんか意外に激しい性格の神姫だな。俺のフォトンと気が合えばいいけど」 食いかかるツクハに、意外にも怯まず、相原君が携帯の画像を見せる。映っていたのはフォートブラッグタイプ。・・と、一瞬前まで私の前で立ちはだかっていたツクハがすぐさま画面にかぶりつき、画像を覆い隠してしまう。現金ね。 「え!? この子がアンタの神姫ですか!? かーわい~♪」 「ん? 俺のフォトンを気に入ってくれたのか?」 「フォトンちゃんかあ・・。まあ、しょうがないですねえ、ちょっと位なら、しゅーこちゃんとのオツキアイ認めてあげてもいいですよ」 「ちょっ!? ツクハっ!!」 “お付き合い”の言葉に、声を張り上げてしまう。すぐに恥ずかしくて相原君から目を背ける。きっと今顔が強張っている。変な子と思われた。 「本当か! フォトンも喜ぶよ!!」 でも、相原君はその言葉の意味に気づかなかったらしい。・・・でも私は・・・。 「それじゃあさ、何時法善寺の家に行こう? 家近いの?」 「いや、あんまり・・・」 動悸が止まらない。 「じゃあ休みのほうがいいよな。今週末空いてる?」 「・・ええ、でも、私の家、散らかっているし親もうるさいから・・・」 上手く話せない。 「あ、じゃあ外で会う方がいい? 隣町のヒメガミ神姫センターとか。場所判るだろ?」 「・・・うん」 目を合わせられない。 「じゃ、日曜な。時間は後で教える。それじゃ!」 「あ、ちょっと相原君! 秋子がツクハちゃん持ってきてるのは内緒だよ! 事情が・・」 「判ってるって豊島。じゃあまた明日な!」 「言うだけ言って帰っちゃったよ・・・。でも相原君の方もさ~、秋子に気があるよね。アタシも神姫持ってるって言ったのに秋子しか呼ばないし」 「うんうん。でもいきなりデートなんてフトドキモノですよ!!」 「デートだなんて、そんな・・・」 彼の笑顔が焼きついて、まだ、頬が熱い。 帰宅するまでの間中、胸のざわめき治まらない。ツクハはまた寝かせておいて良かった。起きていたら「まだしゅーこちゃんがふやけてるです~!! あんのスケコマシ~!!!」なんて五月蝿そうだから。 ・・・そう思っている内にもう自宅前。惚けていた割にバスは乗り間違えなかったようだ。我ながら可愛げがない。そうだ、神無やツクハはあんな事を言っていても、相原君はきっとそうは思っていない。だって私に可愛い部分なんて無い。目が悪いからいつもしかめっ面をしているし、最近笑った覚えも無い。それなら、ずっと神無の方が可愛い。だから、そんな事は無い。ただ神姫に興味があるだけ。 「可愛くなんて・・・」 「秋子、遅かったな」 身の毛が弥立った。玄関の先に居た、悪夢に。 掻き切られ気味に取り戻した理性が、声の主を凝視する。醜い、醜い、醜い、男。私の兄、法善寺冬次。どうして・・こんな時間に家に居る? 「仕事が、早く上がった。それに、おまえに用があったからな。また、神姫が1“台”調子悪くなったんだ。貸せよ、お前の神姫」 「・・・もうツクハは戦わせない、絶対に」 「はあ? 戦わせるのが武装神姫の使い方だろ? そいつが居れば、負けは無いんだ、貸せ。今週の日曜だ」 低く崩れた声が強制する。けれど絶対に屈しはしない。日曜は相原君との約束の日。それだけじゃない。この男が私とツクハにしてきた事を思えば、従う理由はひとつも無い。 この男はツクハを捨てた、ひどくモノのように。けれど私が彼女を拾えば、卑しい強欲で返せと叫ぶ。それだけでは済まなかった。私がツクハを置き学校に行っている間に、この男はツクハを連れ去って、そして戦いを強制した、何度も、何度も。きっと私に何かすると脅迫したのだろう。昔、私にしたのと同じに。私がその事実に気付いた時、彼女が右腕を失って帰ってきたその時には、何年かぶりに嗚咽した。だから・・・ 「お前の言う事なんて、聞けないっ!!」 ツクハの入った鞄を抱えて階段を駆け上がる。鍵は三重に閉めて、そして、力が抜けて蹲る。 「ううっ・・・」 出来れば、この身の全ての血を抜いて、取り替えて、あれと他人になりたかった。 「それは尾行ね絶対。初デートなんて面白・・重大なイベント、影ながら助けてあげるのが親友ってモノじゃない? あ、このフライドチキン、下ごしらえ足りないわね。ハーブ少し刷り込むだけで、違うものよ?」 「むぐむぐむぐ」 「・・・アニーちゃん、絶対面白がってるでしょ。それから味に文句があるなら手伝ってよ、小食のただ飯食らいサン」 何故かすっかり定着しちゃった、この銀髪中性神姫(オカマとは違うんだって)を含めた我が豊島家の夕食。ロウと2人よりは間が持つとは言え、毎回ヒトの味付けにとやかく言われるのは的確なだけに結構ストレス。・・と、それはともかく。 「そんなにしたいなら、アニーちゃんがすればいいでしょ、尾行」 「う~ん、そうしたい所だけど、場所が神姫センターじゃ無理ねえ」 「どうして? 神姫センターなら神姫が居たって平気じゃないの?」 「こっちには、こっちの事情があるのよ。金、土・・あと丸2日じゃロウの【ジャミングパック】も出来上がらないし、神無ちゃんしか出来ないのよ。準備はしてあげるから」 「むぐむぐむぐ」 よく判らないまま言いくるめられてしまう。そりゃあまあ、アタシだって秋子と相原君がどうなるのかは知りたい。秋子って男の子にはアタシ以上に免疫少なそうだし、心配な気持ちも確かにある。 「・・・まあ、日曜は晴れるし暇だから、いっかぁ・・・」 「むぐ・・ごくん。カンナっ! にくっ! おかわり!!」 「もう無い!」 その時は、漠然とした気持ちだけで、結果なんて見えてなかった。想像も出来なかった。 目次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2369.html
第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第8話 「爆兎」 ズンズズン・・・ドオン・・・ボム・・・ボウン・・・ 遠くで鈍い砲撃音が響く・・・ 重装甲戦艦型MMSの「ドセットシャア」「ウォース・パイト」はスーザンを残して廃墟となったゴーストタウンを併進する。 ドセット「スーザンの奴、うまく新手の神姫部隊を引き付けたかな?」 細田「あの砲声が聞こえている間は生きてるってことだな」 パイト「護衛のアラキナたちが戻ってこない・・・・相当苦戦しているようだ」 和田「なんにせよ・・・」 和田はバトルロンドの筐体の前で腕を静かに組む。 和田「これでようやく我々の当初の目的を達成できるということだ」 ドセットとパイトがこくりとうなずく。 和田がすっと手をかざす。 和田「廃墟ステージに全体に無差別爆撃を開始しろ!!強き者弱き者関係なし!!SクラスだろうがCクラスだろうが関係なし!!全てわけへだなく区別なく粉砕しろ!!邪魔をするものは主砲で叩き潰せ!!火力と物量ですり潰せ!!」 ドセットがチカチカっと発光信号でパイトに合図を送る。 パイトもそれに答える。 爆弾倉がゆっくりと開かれる。そこにはぎっしりと爆弾が積まれていた。 時間は10分前にさかのぼる・・・ 水上ステージの隣に位置する廃墟ステージ、そこではさまざまな神姫が慌てふためいて、逃げ惑っていた。 バイオリン型 「戦艦型神姫の定期便ですわよ!!みんな逃げて!!」 サソリ型「戦える神姫は前へ!!」 フェレット型「わ、わたしは逃げますね!!」 天使コマンド型「ええーさっき何チームかが迎撃に出たんじゃないの?」 建機型「今日は3隻もいるらしいですよーこれぱっかちの神姫じゃ止めれないです」 マーメイド型「・・・キャノン砲装備の神姫は集まってください!!撃沈できなくても近づけさえしなければ・・・」 コウモリ型「私はイヤだよ!爆撃が終わるまで、どっか隠れているね」 砲台型「このコウモリヤロウが!!武装神姫なら正々堂々と戦いやがれ!!」 花型「ビルの上から攻撃すれば!!」 数十機あまりの神姫が右往左往する。 ガレキの山に隠れる者、戦おうと武器を手に取る者、戦場から逃げ出そうとする者でごったがえす。 その中で何十体かの完全武装の神姫が集まって話い合いをしている。 チーム名「あっさり塩味」 □ウサギ型MMS 「ミラー」 Sクラス オーナー名「江原 正」♂ 45歳 職業 高校教師 □天使型MMS 「マイク」 Sクラス オーナー名「石田 圭祐」♂ 42歳 職業 配管工 □ハイスピードトライク型 「ライベン」 Aクラス オーナー名「後藤 敦」♂ 26歳 職業 メーカー営業マン □火器型 「ダニエル」 Aクラス オーナー名「堀内 賢」♂ 26歳 職業 メーカー営業マン □砲台型 「メリッシュ」 Aクラス オーナー名「大滝 寛」♂ 28歳 職業 パン屋 □悪魔型 「カッパーゾ」 Aクラス オーナー名「岸田 恵子」♀ 17歳 職業 高校生 □シスター型 「ウェイド」 Bクラス オーナー名「田岡 麻美」♀ 13歳 職業 中学生 □種型 「アパル」 Cクラス オーナー名「小森 創介」♂ 13歳 職業 中学生 □天使コマンド型「フランシス」 Cクラス オーナー名「草尾 毅」♂ 17歳 職業 中学生 江原「いいか、ミラー俺たちはこっちにまっすぐ向かってくる定期便を迎え撃つ、こんな廃墟ステージでコソコソとネズミのように隠れているのは許さない」 ミラー「・・・戦艦型神姫が本気になってくればイチコロですね」 江原「違う、作戦がある」 筐体のタッチパネルを操作しマップを取り出す江原。 江原「連中は、端から爆撃するためにここから来る、だがガレキが道路をふさいでいるこの道に、なんとか誘い込むんだ、工夫して考えてみろみんな」 ライベン「ここに?」 ミラー「戦艦型神姫が立ち往生、道をふさいだ所を両脇から叩く・・・ということですか・・」 マイク「どうやって戦艦型神姫を潰すんです?」 ミラー「餌で釣り、スラスター及び機関部分を破壊する」 ライベン「餌はなんですか?」 ミラー「お前だ、トライクモードに変形して奴らの前に出て、誘い出すんだ」 ライベン「俺かよ・・・」 フランシス「何で戦艦型神姫を撃破するんですか?みんなロクな重武装も無いですよ?」 ミラー「・・・くっつき爆弾で」 ダニエル「くっつき爆弾?」 マイク「そんな武器あったかな?」 ミラー「昔見た、戦争映画であった」 マイク「なんですかそれは?」 ダニエル「どういうもので?」 ミラー「砲台型の砲弾が余ってるっていっていたな」 ウェイド「何台か砲台型がいたけど、定期便が来るって聞いて逃げ帰っていったよ、弾薬もそのまんま」 ミラー「それを使おう」 ミラーはアパルのソックスをじーと見る。 ミラー「綺麗な靴下だな、アパル」 アパル「はい!!マスターから昨日プレゼントでもらった・・・靴下・・・なんです・・が・・・・」 アパルはどういうことなのか理解しはじめて言葉が詰まる。 ミラー「靴下を履いている神姫から靴下を脱がして、砲弾を詰め込んで信管を埋め込む、靴下に接着剤を塗って目標に向かって投げるとくっつく、【くっつき爆弾】だ。他にいい手があれば聞こう」 ライベンがペッと唾を吐いて毒づく。 ライベン「いいね、靴下まで武装にするか」 アパルは靴下を脱いで砲弾を詰め込んで、接着剤に浸す。 アパル「はあ・・・せっかくマスターに買ってもらった靴下なのに・・・」 小森「ぼやくなアパル、靴下ぐらいいくらでも買ってやる」 ダニエルは壊れた教会の鐘楼の上によじ登る。 堀内「どうだダニエル?」 ダニエル「いいぞ、ここからなら敵の動きが見渡せる。 カッパーゾが砲弾を地面に埋める。 岸田「何してるの?カッパーゾ」 カッパーゾ「地雷です」 ミラー「悪くない、なんとかなりそうだ」 江原「アラモの砦だな・・・」 ミラー「うまくいかないと全員、お陀仏ですね」 メリッシュ「アパル、よく聞け」 アパル「なんですか?」 メリッシュ「俺は撃ったら逃げ込む、身軽にするために弾薬は持たない、お前は代わりに弾薬を持って待機しているんだ、いいな、大丈夫か?」 アパル「は、はい」 アパルはCクラスで大規模なバトルに参加したことはない、しかも相手は巨大で重装甲の戦艦型神姫だ。戦艦型神姫なんて見たこともない。 アパルはルーキー神姫なので、直接的な戦闘には参加せずに補助で動くことにした。 アパル「こ、こるなるとは・・・」 メリッシュ「エライ災難だな、お前も」 メリッシュはアパルに砲弾や弾薬を持たせる。 アパル「ま、まったくです」 メリッシュ「イチカバチかだ」 メリッシュは、ぽんとアパルの肩を叩く。 アパルはふーーーと息を吐く。ずるりと砲弾が地面が落ちる。 アパル「うああわ・・・あわあわ・・」 メリッシュ「落ち着け・・・」 メリッシュは冷めた目でアパルを見つめる。 ぞろぞろと何機かの神姫がそそくさと逃げていく。 カッパーゾ「フン、腰抜けどもめ・・・」 ライベン「一生そうやって強い奴から逃げていればいいさ」 ウェイド「賢いんだよ、連中は」 ウェイドがジェリカンのアルコールをぐびぐびと口をつけて飲む。 ウェイド「嫌なことから逃げられるうちは、逃げればいいさ。いざ逃げるに逃げられない状況になったときこそ、武装神姫の真価が発揮されるんだよ・・・」 ライベン「誰の言葉だ?」 ウェイド「・・・俺の言葉さ」 それぞれのオーナーたちは戦艦型神姫が来るのを待つ間、昼飯を食べたり雑談に花をさかせている。 戦いと戦いの合間のほんのひと時のささやかな平和な時間・・・ ゴーン・・・・ゴオオオオン・・・・オンオンオン・・・ 低い重低音のエンジン音が廃墟のビルの谷間から響いてくる。 カタカタと小さな小石が音に反響して震える。 ダニエル「来たぞー!!」 半分壊れた教会の鐘楼からスナイパーライフルを片手に身を乗り出して叫ぶダニエル。 ミラー「ダニエル!!数は?」 ダニエル「東から2隻、カタリナ社製の重装甲戦艦型神姫!!ヴィクターⅡ級2隻!!まっすぐにこっちにくる、護衛はいない」 ミラー「護衛無し?」 ライベン「罠じゃないのか?」 ミラー「ライベン!トライクモードで敵を誘え!」 ライベン「了解!」 ライベンはガキンとトライクモードに変形する。 ミラーが叫ぶ。 ミラー「お前らも攻撃準備!!」 ウオオンウオン・・・ライベンのリアパーツのエンジンが唸る。 後藤「幸運を!」 ライベンのオーナーの後藤がイヤホンで話す。 ライベン「俺は生まれつきツイてる!!」 ギュオン!! エンジンを吹かしながらライベンは戦艦型神姫に向かっていった。 メリッシュとアパルが廃墟のビルの中に入り、メリッシュの大砲に砲弾をセットする。 アパル「セットよし」 メリッシュ「クソッタレ、やっぱり12時きっかりに出やがった!」 ウェイドが飲んでいたジェリカンのフタを閉めると信管を刺した。 ドンドッドドン・・・ズズン!! 何発かの砲弾が廃墟の手前で爆発したと同時に大慌てでライベンがトライクモードで戻ってきた。 ミラー「うまく誘きよせたか?」 ライベン「ハアハア・・・ハア・・・」 ライベンは荒い息を吐いている。 ライベン「くそう、俺を見てすぐに、主砲でぶっ放してきやがった!!後ろを見ている暇なんてねえ!!」 ゴゴゴゴ・・・ゴンゴオン・・・ゴゴゴゴン・・・ 低い重低音が近づいてくる。 ミラーとライベン、フランシスはガレキの山に身を潜め、廃墟の入り口を注視する。他のチームの神姫たちもじっと身を潜めて隠れる。 ぎゅうときつくライフルを握りしめる砲台型。ビルの壁にへばりつくコウモリ型、マシンガンの弾を込める天使型など、他にも数十体の神姫が戦艦型神姫を待ち伏せていた。 ドセットシャアは廃墟ステージの手前でピタリと止まった。 ドセット「・・・・・」 細田「待ち伏せているな、これは・・・」 パイト「さっきのトライク型が斥候でしょう」 和田「ふむ・・・・」 和田は顎に手を添えて考える。 和田「ドセット!迂回しろ!パイトは直進」 ドセット「了解」 和田「爆弾倉を閉めろ!!市街戦、砲撃戦用意!!」 ゴゴゴン・・・・ゴゴゴ・・・ ドセットはライベンを追わずに廃墟の外を迂回する。 ミラーはスコープで、ガレキのスキマから様子を伺う。 ミラー「迂回しやがった!!」 ミラーは半分壊れた教会の鐘楼にいるダニエラを見る。 ダニエラは手で合図する。 ミラー「1隻は左へ行く」 ゴゴゴゴゴン・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴゴ・・・ 一隻は左へ迂回しもう1隻がまっすぐ直進してくる。挟みこむつもりだ。ゆっくりと速度と高度を落とし、地面スレスレを戦艦型神姫が進んでくる。 カシャン 安全装置をはずすメリッシュ。その横でごくりと唾を飲むアパル。 パイトは十二分に警戒しながらゆっくりと進む。 ゴゴゴゴ・・・・ ミラーとライベンの手前にあるガレキの山の砂が振動で降るえ、さらさらとこぼれる。 カチンとカッパーゾが地面に埋めた地雷のスイッチを入れた。 To be continued・・・・・・・・ 前に戻る>・第7話 「轟兎」 次に進む>・第9話 「嵐兎」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/732.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・鳳凰カップ編-02 鳳凰カップ特別編便乗企画 「だー!! Mk-Z、手が空いてるんなら手伝え!!」 朝、開場したばかりの鳳凰カップ会場の一角。 CTaが相変わらずの油くさいメイド姿でわめきたてていた。 と、CTaのポケットに入っていたヴェルナがひょいと顔を出し、 「マスター、妙案があります。」 混乱するCTaに声をかけた。 「まもなく、久遠さんがこの付近を通過する模様です。いっそ、 臨時要員として使ってはいかがですか?」 「ふむ・・・そうだな、拉致るか。」 「拉致るってマスター、久遠さんなら言えば手伝ってくれるっ すよ・・・。」 傍のテーブルで物販の伝票に半ば埋もれながら整理をする沙羅 が言った。 東杜田技研として久々のイベントでの展示。 メインには、ちっちゃいもの研こと小型機械技術研究製作部の 製品展示を据え、脇では現行品の即売コーナーも。ついでに、 他の部署の紹介コーナーを設け、ちゃっかりリクルートまでも やろってしまおうという大胆ぶり・・・が仇となり、いつの間 にか責任者にされていたCTaは見事なまでの混乱っぷり。 「CTaさん、ダメです! 僕はこのあと相談コーナーに張りつか なくちゃいけないんですからっ!!」 Mk-Zも珍しくカリカリしている。 彼は神姫のメンテナンスに ついての相談コーナーを任されていた。 午前の部の整理券を配り終え、まもなく開始する相談コーナー の準備に手一杯・・・ 「マーヤ、機材は?」 「おにーさま、サーヤが機材に埋まりました~!!」 「うをー! 早く掘り出せ!! リーヤは?」 「展示のデモ神姫として、朝からあっちにかかりっきりです!」 「しまったー! そうだったー!!」 一人絶叫しながら、技研の他のスタッフとともに急ぎコーナー を整える。。。 「お、押さないでくださーい!!」 一方の物販コーナー。 早くも行列ができていた。 お目当て はポケットスタイルの先行販売。 整理券の配布をするは、半 強制的にバイトをさせられているかえで。 小柄であるが故、 声を張り上げてもなかなか認識されない・・・そんなかえでを フォローするフィーナ。 「整理券はお一人様一枚! はい、はいどうぞー!」 CTaから借りた特装セットからフライトユニット(イオが持って いるアレと同等品)を選び、かえでの頭上でプラカードを手に 飛び回る。。。 ・ ・ ・ 屋台コーナーの片隅の休憩スペースにて、まったり休憩の久遠 と彼の神姫たち・・・と。 「あ、マスター。あちら・・・八御津さんではないですか?」 イオが久遠の袖を引っ張った。 「ありゃ、ホントだ。」 久遠が気づくとほぼ同時に、向こうも気づいたようで、久遠の ところへやってきた。 おそらくUSアーミーの放出品であろう ジャケットの胸のポケットの部分には「碧空のスナイパー」の 異名を持つ兎子が収まっていた。 「こんにちは、久遠兄ぃ。」 「やっほぉ、みなさーん。」 明るく挨拶をする二人に、久遠たちも応える。 「もしかして試合出たんですか?」 シンメイの問いに、兎子のブリッツは神姫みかんストラップを 取り出した。今大会の参加者全員に配られたという、東杜田の 提供品だ。。。 「いやぁ、予選落ちっすよ。でも、いい試合ができたんで悔い はないっす!」 八御津はそういいながら久遠にフリーのコーヒーを渡した。 「いいところまで行ったんですよー。 ですが、あと一歩の所 で力負けしてしまって・・・。 おそらく、あの方たちは相当 の上位までいくと思います。」 相変わらずのさわやかさで、試合の顛末を語る兎子のブリッツ、 そして八御津。 ・・・やはり軽装に近い兎子だと、いざ力の 勝負となった際に押し負けてしまうらしい。 話のところどころに、二人の悔しさもにじみ出る・・・。 「そうだ、パワーアップと言えば、ちっちゃいもの研でパワー ユニットの試作機デモをやってるとかいってたなぁ。」 久遠が言うと、 「どうですか、東杜田のブース行ってみませんか?」 ロボビタンの試供品をすするイオも続けた。 「もちろんですよ。ポケットスタイルの先行販売も気になって いるんで。。。」 八御津と久遠は、それぞれの神姫をそれぞれに収めると、連れ だって東杜田へのブースへ向かった。 >>続くっ!!>> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2603.html
第二章 2038/2/17 04:35 同基地 私室 “『特技兵』” 「テーンッ、ハッ!(気をつけ!)」 あれから作戦評価報告書やデブリーフィングに忙殺され、私が寮の自室にたどり着いたのは軽く日をまたいで、そろそろ朝日も登ろうかという時間……にもかかわらず、私の『小さな部下』のうち数体は机の上に直立不動の姿勢でこちらに視線をよこしていた。 「まだ起きてたの?」 「ええ、まだお褒めの言葉をいただいておりません」 気だるく尋ねた私に、ダガーワンチャーリーことC分隊の指揮官を勤めるベックウィズがいたずらっ子のような笑顔を浮かべながら答える。 「褒めろって言いたいのかしら?」 「ええ、私の分隊が間違いなく一番戦功であります」 いけしゃあしゃあと言い切ったベックウィズを一日分の苛立ちを込めてひと睨みすると、彼女はやっと口を閉じた。 心底おかしそうに笑いをこらえてはいたが。 「申し訳ありません、中尉。 ベック、いい加減にしなさい」 隣にいたA分隊の分隊長。 ウェストモーランドがあまりに態度の悪いベックを注意する。 「そうね、ベック。 あのまま死んでもおかしくなかったわ」 「死なないわよ」 B分隊の分隊長。 エイブラムスがモーラに続いて苦言を呈したが、ベックは途端真面目な顔になって答える。 「あのクソッタレな戦場で何度死んでも、バックアップがある。 ですよね、中尉」 彼女の言うクソッタレな戦場……民需用のホビーである彼女たち、武装神姫の戦闘およびフィールド生成システムをDARPA(国防高等研究計画局)が軍需用に改良した最新鋭戦術・戦略シュミレーター『テキサス』の事だ。 サーバーから提供される15エーカー四方の立方体内に想定されるあらゆる条件……地形や気候だけではなく砂や埃による装備の劣化や、一体一体の体調といった概念までも再現するそれは『第二の現実』といっても過言ではなく、ウェストポイント(陸軍士官学校)でも試験的にこのシステムを利用した演習が行われているし、現在の士官教育を一変させるとまで言われている……のだが…… 「それでも、その瞬間までそこでにいた人格は消滅するのよ、ベック?」 バーチャルな死の概念。 それをシステムではデータの消去という形で表す。 彼女たちはある種本能的にそれを恐れ……結果、よりリアリティのある戦闘状況が再現される、というわけだ。 それでも、軍用である彼女たちは民需用では強固なプロテクトがかけられている情報記憶分野のバックアップが可能となっている。 早い話が演習終了時に演習開始前の状態で生き返る。 といえばわかりやすいだろうか? 「一時的な記憶喪失なんか怖くないでしょう? とかく、お褒めの言葉がいただけないようでしたら私はこれで失礼させていただきます」 ベックはかかとを合わせて敬礼すると、すばやく割り当てられたクレイドルへ潜り込み、スリープモードへと移行した。 「……中尉、そろそろお休みになられないとお体に触ります」 少々、あっけにとられていたが、モーラが心配そうに見上げているのに気づき彼女の頭を指先でなぜてやる。 「ベックは悪い奴ではありません。 ですが……」 「戦友を失ったと聞いてるわ。ヒネているというより拗ねてるのよ」 モーラが言葉を詰まらせたあとをエイラスが引き継ぎ、同じ顔をした二体の視線がクレイドルで眠る同胞に注がれる……彼女の名はベックウィズ。 消えかけた特技兵の階級章を付けた、部隊唯一の実戦経験者。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1518.html
ネコのマスターのクリスマス・買い物編 家を出た俺と礼奈は近所にある大きなデパートを目指して歩いていた。 「んで、何で俺だけお前の買い物に付き合わなきゃならんのだ?」 「だって、クリスマスプレゼント買いに行くんだもん。タマちゃんの好みは兄さんに聞くのが一番でしょ?」 あぁ、そういう事か。そういえばもうそんな時期だったなぁ。12月は誕生日だのクリスマスだの大晦日だのイベントが多いからなぁ。 なんて個人的な事を思いつつ、俺はサイフの危機をどう乗り切ろうか悩んでいた。 そんなこんなでデパートに到着。ここら辺では一番大きいデパートだしクリスマス間近という事もあって、店内は人で埋め尽くされている。 「うわぁ、凄い人!ケーキとか残ってるかな?かな?」 一瞬礼奈が別の世界の礼奈に見えた気がするが、気のせいだろう。 それより本当にこれではケーキはもちろん普通のプレゼントだって相応しい物が見つかるか不安だ。俺達はまず一番心配なケーキを見に行った。 タマと俺が好きなチョコレートケーキと礼奈が好きな生クリームケーキはあったが、キルケが好きなフルーツケーキは既に予約がいっぱいだった。 仕方なくキルケの分も生クリームケーキにする事にして、予約をする。 次にプレゼントだ。礼奈はキルケに服を買ってやるつもりらしい。タマには何が良いか聞かれたが去年何を渡したか思い出せない。 仕方なくタマも服で良いんじゃないか?と言っておいた。 「そういえば兄さんはプレゼントどうするの?」 「ふっふっふ。実はもう買うものを決めてある」 「本当?楽しみだなぁ♪」 そうは言ったがさて困った。本音を言えばまだ誰の分も決めていない。 礼奈に鉈なんて送ったら怒られるか?あ、いやもちろん冗談だが。 自然に目が刃物のコーナーに行きそうになるのを押さえ、真面目にプレゼントを考える。 デパートは広いのでとりあえず別行動する事にした。 そして一人になった和章を遠くから見つめる影がひとつ。 「ターゲットを捕捉。ターゲットは妹と別れ一人で行動を開始した模様。」 影の主は武装神姫、タイプはヴァッフェバニー。手に持つ無線を介して誰かと会話をしている。 「了解。引き続き追跡、監視せよ。」 無線機からの声の指示を受け、その神姫は影へと姿を消した。 そのころの山田家。 「~♪」 私がマスターの帰りを待ちながら鼻歌を歌っていると、タマがこっちに来て 「ねぇ、ますたーとレナちゃんはなんでわたしたち置いてっちゃったのかな?」 と聞いてきました。タマはわかっていなかったんですか。 「それはですね、二人がクリスマスプレゼントを買いに行ったからなんです」 「くりすます・・・あ、そっか!そういえばもうすぐくりすますだったね!」 クリスマスすら忘れかけていたようです。そう言えば前和章様からタマは物忘れが多いと聞きました。何でも誕生日すら忘れられていたとか。 マスターはきっと和章様にとても凄いプレゼントをあげるでしょうね。あんな顔でしたから。 「ぷれぜんと、たのしみだな~♪」 タマがニコニコしながらそう言ってます。確かに楽しみですね。私はクリスマスプレゼントを貰うのは初めてなので、尚更楽しみです。 そう言えばマスターのお母様の神姫のペルシスらしき神姫が二人の後をつけていたようでしたが・・・何だったのでしょうか? 何者かの視線を感じ、俺は周囲を見回す。しかし俺を見ているのはレジ打ちをしている店員だけだ。 「・・・気のせいか?家を出てからずっと誰かに見られてる気がするんだが・・・」 「お会計21894円になりまーす」 「うぅ高い・・・家族持ちニートにこの季節は辛いぜ・・・」 そんな事を呟きながら俺は会計を済ませ、今買ったみんなへのプレゼントを袋に詰める。 すると同じく買い物を済ませたであろう礼奈が俺の所に来た。 「さ、あいつらが待ってるだろうし、帰るか」 「うん!」 タマ達の喜ぶ顔が目に浮かぶ。そのせいで一度電柱にぶつかったが、そんな痛みも気にせず俺は礼奈と一緒に家に帰った。 第六話につづく 第四話に戻る ネコのマスターの奮闘日記
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/190.html
前へ 先頭ページ 次へ 第三話 エイダ クエンティンは混乱していた。 まばゆい光に包まれたと思ったら、ボディが今までのとぜんぜん違うものにすげ変わっていたのだから混乱しないはずがない。いや、すげ変わっていたのではなく、これは本来のボディそのものが変化したのだ。見たこともないエネルギーラインが体を取り囲み、見たこともない装甲が全身に取り付けられている。というよりは装甲そのものも体の一部のようだった。 あまつさえ当たり前のように空中に浮遊している。アーンヴァルのような推進器の類はなく、背中に生えた小さな羽根からしゃわしゃわと出ているエメラルド色の粒子だけで、轟音も地面に吹き付ける風圧も無く、ただ浮いているのだ。 こんなことになった原因はすぐに分かった。あの銀髪の変な神姫だ。あの変な神姫が自分の頬を触ったと思ったら、消えて、なぜかその神姫の声が今は自分の中から聞こえてくる。 ということはその神姫は自分の中にいるという解釈がごくごく自然に成り立つが、ちょっと待った、とクエンティンは類推を引き止めた。 ありえない。そもそも自分の中にいるというその事実こそがありえない。純然たる世界の物理法則からして、二つのものが一つになるなんて絶対に起こらない。いや、一つになって質量が単純に二倍になるならいい。それは合体であり、物理法則になんら抵触していない。 一つになったのに質量が二倍に達していないのが問題なのである。たとえあの神姫自体がこの珍妙なアーマーに変形したのだとしても、二倍には程遠い。せいぜい一.三、四倍くらいだ。残りの六、七割はどこへ行ったのか。消えるということは無い。なら、融合したとしか考えられないのだが……。 『そのとおりです』 あの声がまた中から聞こえた。頭ではなく、胸の中、心臓の辺りから聴覚センサーを経由せず、陽電子頭脳の意識レベルに直接響いてくるらしかった。 「ちょ、ちょっと待ってってば、どーゆー原理でそうなってるわけ? そもそもアンタ誰?」 声に出して、クエンティンは訊いた。理音を含む周囲には独り言にしか聞こえないのではないかと彼女は思った。 『いま説明している時間はありません。ボギー、総数一二機。包囲されています。危険度レッド。脅威度イエロー。今すぐ戦闘行動を開始してください。ボギー1、8、来ます!』 「ええっ!?」 キルルルルッ 包囲している一つ目どものうち二体が、小さな羽根からオレンジの粒子を撒き散らして接近してくる。 クエンティンは慌てた。フロストゥ・クレインは足元はるか下に置き去りにされており、取りに行く暇は無い。 「ぶ、武器は!?」 『使用可能武装情報および取り扱いマニュアル、オープン』 声がそう言った途端、クエンティンはいくつかの武器がこの体にあることと、その使い方を思い出した。教えられたのだ、口頭ではなく情報として、やはり直接、陽電子頭脳へ。 右手を前方の一つ目、識別名ボギー1へかざす。 ツ、ツ、ツシュッ! 胸部の球体から右手へ伸びるエネルギーラインが点滅し、手のひら下のスリットから、全身を走ったり羽から出たりしているエネルギー粒子と同じ色をした粒子の塊が高速で三連射された。 三つのエネルギー塊は突進してくるボギー1にすべて命中し、足止めを果たす。 その流れで、手首にフォールドされているあの細長いブレードを展開、上体を右に回転させ、右後方へ切りつける。 シュパンッ! そこに丁度接近していたボギー8が、胴体から真っ二つに切り離された。 『ボギー8撃破』 そのままの流れで、もう眼前に肉薄していたボギー1へ、返す刀を真上から脳天へ振り下ろす。 シバッ! 刃を受けたボギー1は縦に半分にされて地面に落下、そのまま爆発した。 『ボギー1沈黙、8を除くボギー2から12、来ます』 残りの十体が一斉に突撃する。 衝突寸前、クエンティンは左手でボギー7をがっちりと引っつかむ。吸い付くような感触。グラブ機能だ。 そのまま最大出力で真下へ離脱する。小さな羽根からエメラルド色の粒子が大量に放出され、クエンティンは猛スピードで地面へ接近する。思わぬ加速に彼女は面食らった。 『衝突警告!』 「ぐうっ……!」 むりやり推進ベクトルを真横に切り替える。 バ、シャウッ! 地面すれすれで、たいしたGも無くすんなりと、クエンティンは真横に移動することができた。 そのまま真上を振り返り、敵集団へ左手のボギー7を力任せに投げつける。 目にも留まらぬ勢いでボギー7は敵集団へ衝突。それを含む三体のボギーはその衝撃で爆砕。 『ボギー2、7、12、撃破』 続いてクエンティンは背中に意識の一部を集中。 視界の生き残ったボギーにそれぞれロックオンシーカーが表示される。 ガシォーン! ロックオンレーザーである。直進しかしないはずのレーザーが、何十本、生き物のように曲がりくねって、数本ずつ一つ目どもに向かってゆく。 命中。 衝突でダメージを受けていた二体がそれで機能を失い落下した。 『ボギー4、5、撃破』 残り五体は距離をとって態勢を立て直す。 「何、この機動性……」 ここまでかかった時間は五秒にも満たない。性能を極限まで追及したアーンヴァルでさえ、こうはいかない。 「アンタ何者?」 クエンティンは声の主に訊ねる。 『独立型武装神姫総合戦闘支援システムプロトタイプ、エイダです』 エイダと名乗った声の主は、抑揚の少ない口調で答えた。 「ンなの聞いたこと無いわよ」 『公に対する情報開示はまったくなされていません』 「じゃあ聞くけど、アンタどこ製?」 『回答不能』 「同郷? BLADEダイナミクス? 少なくともカサハラインダストリアルじゃないわよね」 『回答不能』 「……もしかしてEDEN本社?」 『回答不能』 クエンティンは頭に来た。 「アタシのボディ間借りしといて回答不能は無いでしょ!?」 『申し訳ありません。情報プロテクトがされており、責任者の許可が無ければ開示できません』 そっけなく、エイダは答えた。 だったらなんで、独立型うんたらかんたらプロトタイプって自己紹介できたのよ。 クエンティンは憤りを禁じえなかった。 まったく、とんだ災難に巻き込まれちゃったわ。 「こんな道端のど真ん中で氷雪浴してた理由も回答不能?」 『申し訳ありません』 「もういいわよ」 はあ、とクエンティンはため息を吐く。本当に災難だ。 「そうだ、お姉さまは!?」 あたりを見回す。電柱の影で手を振っている理音の姿が見えた。 良かった、無事だわ。 キリキリキルッ それにつられたのか、残った五体の一つ目どもが理音のほうを向いた。 そのまま彼女へ近づいてゆく。 「なんで!?」 クエンティンは反射的に飛び出した。 明らかに一つ目どもはお姉さまを襲おうとしている! ロボット工学三原則、改名、人工知能基本三原則にばっちり抵触しちゃってるじゃない! なのになんで!? 簡単に一つ目どもを追い越し、クエンティンは立ちはだかった。 「アンタたち、人間を襲うの!?」 一つ目どもは答えない。発声器官が無いのだ。 突撃が答えだった。 「ちくしょー!」 クエンティンはブレードを展開、一番近いボギー10に急接近し袈裟懸けに切りつける。主エネルギーラインを断ち切られたボギー10は力を失って墜落。 切りつけた勢いを反転させ――やはり不思議なことに反動は無かった――正反対を飛んでいたボギー6の頭部を貫き、ブレードに挟ませたままその場で八の字にぶん回す。ボギー3,11がぶつかり、三体はまとめて爆発四散。 『ボギー10、6、3、11、撃破。敵、残り一体です』 「きゃああ!」 理音の悲鳴。 唯一残ったボギー9が、もう理音の目の前まで近づいていた。両手を真上に掲げている。 両手の先からオレンジ色のエネルギーカッターが伸びる。 「しまった!」 クエンティンは彼女の元へ飛ぶ。 だめだ、間に合わない! ボギー9が理音へカッターを振り下ろす。 パンッ、パンッ! まったく予想外の方向から甲高い破裂音が響き渡った。 ボギー9は何か強烈な勢いを持ったものに弾かれ、電柱に激突し破裂した。 理音とクエンティンは音のした方向を振り返る。 高級そうな白いスーツを着た、金髪オールバックの、眼鏡をかけた長身の青年が、煙を吐いている拳銃を持って立っていた。本物の拳銃である。 彼の後方には頑丈そうな真っ黒いサルーンが停まっている。 「こんなところで貴様に会うとはな」 「あなた……」 理音はその青年を知っていた。 以前とあるセンターの、リーグ無差別エキシビジョンマッチにおいて戦い、すんでのところでクエンティンが敗北した、「ルシフェル」という武装神姫のオーナー。 鶴畑コンツェルンの御曹子、長男、鶴畑興紀である。 「まさか拳銃で壊せないとは。たいした新型だ」 鶴畑興紀は地面に転がっている一つ目の残骸を見ながら、ひどく感心した様子で言った。 キルキルキルキルキルキル キリキリキリキリキリキリ さらに生糸を引っかくような音が何重にも聞こえた。 理音たちの後ろの道から、吐き気を催すような大量の一つ目 どもが現れ、近づいてきたのだ。 「こんなにいるなんて!?」 「チッ、乗れ!」 興紀は二人に手招きをし、サルーンへ乗り込んだ。 理音とクエンティンは一瞬迷ったが、選択の余地は無かった。このままこの場に居たのでは確実に嫌なことになる。 「何をしている!」 興紀は怒鳴った。 二人はバックを始めているサルーンへ飛び込んだ。 ドアが自動で閉まる。 「じい、出せ」 興紀は運転席の執事に命じた。 「かしこまりました。お二人とも、シートベルトをきちんとお締めになってくださいませ」 興紀も理音もベルトを締め、理音は懐へクエンティンを忍ばせた。 「行きますぞ!」 白髪の執事はシフトレバーを切り替え、アクセルを踏み込む。 狭い道路を、大型のサルーンがぶつかることなく颯爽と走り抜ける。 サルーンは逃走に成功した。 しばらくその場でうろうろしていたが、ややあって、一体残らずどこかへ飛んでいってしまった。 裏路地に静寂が戻った。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2686.html
全く、神姫なんてつまらないよね。こんなにお金をかけていい装備をかってあげてるのに勝てないし。最新型だって言うからかってあげたのに弱っちいのよあなた。それに何、戦いたくないって、あなた武装神姫でしょ。戦わないと意味ないじゃないのよ。はぁ、ママは何でこんな子買ってくれたのかしら。あとパパが帰ってきたら神姫バトルのこと教えてもらうんだ。もっと強い神姫も買ってもらわなくっちゃ。ちょっと、オモチャのくせに泣かないでよ、うっとおしい。はぁ、パパもママも早く帰ってこないかしら。 連続神姫ラジオ 浸食機械 7:人形の家 「全く物好きなのだわ。せっかくの脱出する機会を見逃すなんて」 <そういうグレーテルさんこそ島に残ってるじゃないですか。おまけに生身で神姫と戦うなんて無茶苦茶ですよ> 結局僕が怪しいとにらんだ場所に着くまでグレーテルさんと行動を共にすることになった。相手は数で押してくるのでお互い一人は避けたかったからだ。 <それにしてもすごいですね> ステッキを指さしながら話しかける。 「自分で言うのも何ですが、普通の人が完全武装した神姫と渡り合えるなんて考えられないですよ」 「だがらぐれーでるはずごいんだよ」 「ヘンゼル、余計なことは言わなくていいわ」 言葉を遮ったグレーテルさんの表情はどこかつらそうに感じた。 しばらく歩くと森の木立が切れてきた。もうすぐ目的地だ。そう思っているといきなり足下が崩れた。 「きゃあ」 グレーテルさんの足下を中心に地面に穴が開いて僕たちはその中に落ちていった。とっさにブースターをかけて上に上がろうとするが上から何かが降ってきて結局グレーテルさんの上に落ちてしまう。 「あなたたち、無事なのかしら?無事ならどいてくれるとうれしいんだけど」 「ぐれーでる、だいじょうぶ?」 慌てて動こうとしたが体が動かない。ヘンゼルも武装が網に絡まって動けないでいるようだ。 「全く、網まで落としてくるなんて念の入ったことだわ…もっとも足をくじいてしまったようだからこれが無くても自力ではあがれないけど」 「あはははは、反応があったから来てみたらまたニンゲンがかかったのだ」 穴の上から声が聞こえる。見上げると穴の縁を神姫が取り囲んでいた。そのうち一体が身を乗り出してくる、先ほど声をかけてきたのはこのマオチャオ型のようだ。 「お姉さん、よかったら助けてあげようか?ただしお姉さんの神姫は私たちがもらっていくのだ」 「ほんど?ほんどにぐれーでるたずけでくでるの?」 「ヘンゼル!みっともないまねをするんじゃないのだわ」 グレーテルの言葉に穴の上の神姫達全ての目つきが変わるのが分かる。それでも変わらぬ口調でマオチャオ型が話しかけてきた。 「あったりまえなのだ。あたしは約束は守る神姫なのだ。お姉さんも神姫の言うことは聞いた方がいいのだ。イーダ型が欲しければまた買い直せばいいのだ。」 その言葉にプルミエもヘンゼルも曇る。上の神姫達は何かを期待した目でこちらを見ている。 「お断りよ」 グレーテルさんが短く答えた。その途端上の神姫達が騒ぎ出した。恨むような悲しんでいるようなあきれているような何ともいえない表情を向けてくる。 「ふざけるんじゃないのだ。お前達ニンゲンは助かりたいはずなのだ。神姫なんて買い直せばいいのだ。そんな言葉のおかしくなった神姫になんかこだわる必要ないのだ」 マオチャオの叫びはとても痛々しかった。他の神姫達も偽善者だの嘘つきだの暴言を吐きかけていた。誰かが小石をグレーテルに投げつけてきた。石の数は多くなっていきグレーテルの肌はあちこち赤く染まっていった。 「やめで、ぐれーでるをいじめないで!」 ヘンゼルがグレーテルを石から庇うために駆け出した。網に武装が絡まって動けなかったので四肢と武装を強制パージして。ヘンゼルの背中を石が打っていた。小さな石と入っても神姫にとっては拳より大きな石でずっと殴られているようなものだ。 「ぐれーでる。やっぱりあだじをずてでよ。わるいごだったあだじをずでてよ」 「…ばか、あんたを守ってあげられなくて何の意味があるのよ」 泣き顔で懇願するヘンゼルにグレーテルがきっぱり言い放つ 「ふざけるななのだ!お涙頂戴はいらないのだ!なんでそんな欠陥神姫を捨てないのだ!!何でそんな神姫を大切にするのだ!!!」 マオチャオが石を投げる。それはヘンゼルの背を打つ。あっと声を上げヘンゼルが倒れ込むのがスローモーションで僕の目に映った。グレーテルの目が大きく見開かれる。 「どうしてお前みたいな神姫にマスターがいるのだ…」 マオチャオが石を投げ続ける。みんなの視線がヘンゼルに注がれている。恨みで神姫が殺せたらといわんばかりの勢いだ。誰も僕達に注意を払っていない。後一本もロープを切れば逃げられるとしても。こっそりバーニアの暖気を進めていたとしても。 「マスター、準備完了です」 プルミエの言葉が合図だった。 次回:蟲毒の底に続く・戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2533.html
MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 10」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 熱弁を振るう春日に神代が冷ややかに答える。 神代「それで、このアヴァロンに来た目的はなんだ?」 春日「目的?決まってる私のリカルダで戦うことだ」 神代「・・・そういうことを私は聞いているんじゃない」 春日「ではでは、どういうことかな?」 神代「ふう・・・・」 神代は手元にあるワインを飲み干す。 神代「腹を割ってずばり話そうか・・・春日の狙いは6000万か?」 春日「NO!そんな端金には興味ない」 神代「ではなんだ」 春日「真相を知っているな?神代」 神代「ふ・・・あっははっははっはは!!」 神代は大声で笑う。 神代「もちろんだ。面白いから黙ってみている。どうしようかは悩んでいるがね」 春日「可哀想なのは騙されているあの2人だな」 神代「まったくだ、ひでいことをする」 春日「まあ、お金のためだ、仕方ない」 天使型のルカはなんのことか分からず首を傾げる。 ルカ「・・・一体何の話をしているのですか?」 神代「大人の話だ。それも金と女の絡んだ話だ」 ルカ「なんだか複雑で難しそうですね・・・」 春日「ノンノン」 春日が指をふる。 春日「これはとっても単純で分かりやすいことだよ」 神代「さて・・・それで春日はどうするつもりだ」 春日「決まっている、せっかくアヴァロンまでやってきたんだ。思いっきり暴れさせてもらう」 神代「あいつはどうするつもりだ?」 春日「・・・さあて、どうしようかな?」 春日はペロリと舌なめずりする。 春日「まるごと喰ってやるのも手だ」 神代「私は遠慮しとくよ」 春日「あっははっははは!!では、まずは挨拶代わりに派手にいこうか・・・」 春日の目が怪しく光る。 東條「レディース・アンド・ジェントルメンッ!!!武装紳士および淑女の皆様、大変長らくお待たせしました。今宵のメイン・イベント!!!スペシャルマッチを始めたいと思います」 観客たちが一斉にパチパチと拍手を行う。 台座の中央に、東條が毎度のことながら大げさなパフォーマンスで挨拶を行う。 □サンタ型MMS 「カミュ」 ?ランク オーナー名「東條 輝」♂ ?歳 職業 ??? 東條の肩からぴょんと青色のサンタ型神姫が飛び出す。 カミュ「ヨロシークー今日も元気ー」 観客席から声があがる。 観客1「カミュちゃん可愛いーー!!」 観客2「勝たせろ!!」 観客3「さっさとハジメロ!!」 東條はパンと手を叩く。 東條「さて、それでは今宵のメイン・イベント!!!スペシャルマッチを紹介しましょう。まずは青コーナー、SSSランクの強ランカー「春日」氏の有する『リカルダ』!!」 春日にすっとスポットライトが当たる。 春日「やあやあ、皆さんこんばんは、今日はじめてアヴァロンに乗船したが、なかなかいい船だね・・・気に入ったよ、派手に暴れさせてもらうつもりだ。だから諸君らも派手に遊びたまえ、今日は燃える戦いになるように・・・ささやかなお楽しみを持ってきた」 そういうと春日は指先にピラピラと小切手をはためかせる。 東條「ルールを説明しましょう。春日さまのリカルダに勝利すれば賞金1億円が支払れます」 会場がざわざわとざわめく。 観客4「い、一億ゥ?」 観客5「おおおおおお!!一億キター!」 観客6「なんだなんだあの女!海原よりも気前がいいぞ!!」 観客7「おいおいまじかよ!!!」 観客8「億来るか」 観客9「すっげえーーー!!!」 観客10「さすがアヴァロンだぜ・・・そこら辺の非公式バトルロンドとは桁違うわ」 観客11「ホンモノ」 観客12「くそう、俺も参加すりゃよかった」 ざわめく観客たちを尻目に春日は涼しい顔をしている。 東條「今宵は1対100の変則バトルロンドとなります。対戦相手は現在このアヴァロンに乗船しているオーナー様たちです。このバトルロンドに参加するに当たって一人当たり5万円の参加費で参加できます。現在、このバトルに参加している方々は以下の通りです」 ずらっと並ぶオーナーたちの名前と参加する神姫たち。 春日がちらっと一瞥する。 春日「ふっ・・・」 鼻で笑う春日。 東條「では、今回の戦っていただくステージはこちら砂漠ステージです。ご覧ください。」 小学校の標準的なプールサイズ、幅12m×長さ25mほどのステージには荒涼とした砂漠が再現されていた。 東條「このステージで今回は戦っていただきます」 カミュが捕捉説明をする。 カミュ「砂漠での戦闘になりまーす。砂丘や岩なんかの障害物をうまく利用して戦ってね」 東條「ルールを説明しましょう。1対100のデスマッチ、相手がサレンダーもしくは機能停止すれば試合終了です。武装・戦術はなんでもなり、バトルはこのステージ内のみ、ステージにはみ出た場合は失格となります。制限時間は無し、双方の対戦相手を全滅させたほうが勝ちです。なお春日さまの『リカルダ』にとどめを刺したものが1億の総取りとなります」 カミュ「シンプルシンプルー」 東條「相応以上のルールでよろしいですね」 対戦相手の神姫やオーナーたちはニヤニヤと笑う。 オーナーA「いくらなんでもバカすぎるだろあのアマ」 オーナーB「舐めすぎだろ、SSSクラスだからって調子乗りすぎだな オーナーC「クソッタレ、やってやる!」 オーナーD「ぽんと一億か!!舐めやがって」 オーナーE「キチ○イめ」 東條「ちなみにこのバトルロンドは、ネットの裏サイトでも生中継で公開されます。お互い、素晴らしいバトルを望みます」 カミュ「ネットのみんながどっちが勝つかお金を賭けてね!」 春日がアルミ製のケースの金具をパチンパチンとはずす。 春日「さて・・・始めようか、リカルダ」 アルミ製のケースの中で、白と紺のツートンカラーの重武装の神姫がゆっくりと目を開ける。 キラリと紅の瞳が光る。 リカルダ「戦闘システム起動・・・」 神代が2階の観客席でルカと共に観戦する。 神代「ルカ、よく見とけよ・・・あれが春日の誇る最新鋭の武装で身を固めた武装神姫・・・リカルダだ」 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 対峙する赤コーナーの対戦相手の神姫たちは多種多様な神姫で構成されていた。 大型の戦艦型神姫や軽量の忍者型、大剣を握り締める騎士型、機関銃に弾を込める戦闘機型などなど・・・ 東條「では、皆さん準備はよろしいですね・・・ではバトルロンド・・・・レディーーーーーーーーーーー」 ヒュイイイイイイン・・・・ リカルダのエンジンが風を切り唸り声を上げる、キラキラと緑色の粒子が舞う。 東條「Go!!」 砂漠ステージの中央に、何隻かの戦艦型神姫がバトル開始と共に強烈な艦砲射撃を加える。 重装甲戦艦型神姫A「全艦砲撃開始ッ!!!我に続け!!」 大型の重装甲の戦艦型神姫が艦橋から発光信号をチカチカと光らせ周りの戦艦型や戦車型神姫、砲台型神姫に合図を送る。 巡洋戦艦型A「100対1なら負けはせん!」 装甲戦艦型A「主導権はこちらにある、速攻で決めるぜェ」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!一億円は俺のものだァ!!」 巡洋戦艦型B「ファイヤ!!」 戦車型A「鈍亀の戦艦型に負けるな!全車両一斉砲撃!!」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「撃て撃ちまくれ!!」 砲台型A「くそう!!砲台型を舐めるな!」 砲台型B「畜生!戦艦型に戦車型の連中、調子に乗りやがって!」 砲台型C「撃って撃って撃ちまくる!!一度やってみたかったんですよね!!」 総勢30機あまりの大砲を主兵装備とする砲撃タイプの武装神姫が一斉にリカルダのいる地点に猛砲撃を仕掛ける。 リカルダのいる場所は着弾によるすさまじい猛砲撃で地面が抉り飛ばされ、土煙と土砂と黒煙でまったく見えない。 騎士型「大砲屋の連中、めちゃくちゃしやがる」 忍者型「うううー私らの出番ってあるのかな?」 悪魔型「私もハンマーじゃなくて大砲もってくりゃよかった」 サソリ型「砲撃が怖すぎて近づけない」 侍型「開幕砲撃止めて」 しょぱなからの猛烈な砲撃にたじろぐ他の神姫たち。 ズンズズズウン・・・ 砲弾が着弾するたびにステージがグラグラとゆれる。ステージ全体には硝煙と爆風で煙が充満し、視界が恐ろしく悪い。 戦闘機型「何も見えない」 天使型「センサーが砲撃のショックでパニック起こしてパア」 セイレーン型「あのアホ共!!!私たちのことも考えないよ!」 コウモリ型「まったくだ!」 上空で砲撃が止むまで待機している航空神姫たちがぼやく。 激しい砲撃が間断なく続く。 戦艦型のオーナーたちはもう勝った気で分け前の相談までし始める。 オーナー1「ははっは!!ちょろいものだな!」 オーナー2「所詮は我が戦艦型神姫の敵ではないな」 オーナー3「一億円は私の神姫のものだ」 オーナー4「待て待て、お前らが倒したとは限らんだろ」 オーナー5「私の砲台型の弾が当たったかも知れない」 オーナー6「あんなへっぴり腰で撃った弾が当たるものかよ」 オーナー7「戦果を確認だ!!砲撃止め!!」 ズンズンズウズン・・・・ 戦艦型、戦車型、砲台型神姫の砲撃が止む。 春日は砲撃が収まったのを見て、指示を下す。 春日「リカルダ、敵MMS集団を撃滅しろ」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 何が起きているのが分からなかった。 パンッと空気が爆ぜる音がしたかと思うと、一瞬にして1ダースほどの前方に展開していた騎士型や戦乙女型の神姫が木の葉のようにバラバラになって砕け散った。 撃破のテロップが流れる。 □騎士型MMS 撃破 □戦乙女型MMS 撃破 □忍者型MMS 撃破 □フェレット型MMS 撃破 □犬型MMS 撃破 □虎型MMS 撃破 □天使コマンド型MMS 撃破 □リス型MMS 撃破 □ヤマネコ型MMS 撃破 □悪魔型MMS 撃破 □ウサギ型MMS 撃破 □ハイスピードトライク型 撃破 撃破された後に、物凄い斬撃音と爆発音が響き渡る。 リカルダの攻撃は音速を超え、後から攻撃した音が追いついてきた。 目を丸くする観客とオーナーたち。ぽかんとする神姫やオーナーたちを尻目にリカルダが真っ赤に燃え盛るナギナタを豪快に振り回し、戦国時代の武将のように名乗りを上げる。 リカルダ「やあやあ、遠からんものは音にもきけ、近からんものはよって目にもみよ。我こそは打ち砕く者、リカルダなりッ!!!!」 ダンッ!!!地面を力強く踏みしめ、リカルダがケダモノのように叫ぶ。 「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!大暴れしてやるぜェ!!!!!!!!死にたい奴はとっとと掛かって来いやァ!!!!!!!!ぶっ殺してやるッ!!!!!!ぎゃっはっははっはははッ!!!!」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「敗北の代価 11」 前に戻る>「敗北の代価 9」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1995.html
授業 さぁーて困った事になりました。 突然の放送で困惑しながらも考え込む私。 ある意味簡単な事ですが簡単故に悩んでしまう。 いえ、私一人だけの事だったらすぐに終るでしょうが、今回は他の神姫の方々が居ますので私の独断は決める事はできません。 やはりここは話し合いをしなければ。 「サラ、アイゼン、犬子さん。ちょっと集まってくれませんか」 私の掛け声に集まってくるサラ達。 輪を作るように、というよりゲームコントローラについてる方向キーの十字キーのように集まる。 並び方的には上がアイゼン、下が私、左がサラ、右が犬子さん。 ご主人様の神姫は私含めて四人とパチモン私(シャドウの事)、合計で五人いるのでその内の私が代表で出ます。 この面子で決めないといけません。 先生役を誰がやるのかを! 「え~と、さっきの放送通りに先生役を誰がやるか、という事なんですが…どうしましょうか?」 「どうするといわれましても」 「………なんでも」 「どうしましょうか?」 やっぱりサラ達も困惑しているご様子。 アイゼンは無表情で『なんでも』と言ったのであんまり困ってないのかな? それに『なんでも』って『なんでもいい』の略? 「…あ…でも…マスターを誘惑できる…かも…」 誘惑? アイゼンのマスターって確か男性の…島田祐一さん、でしったけ。 私のご主人様より年下に見えたので高校生あたりかな。 「衣替えの時期…失敗した……次こそ…」 「次こそ女教師姿でアイゼンのマスターを誘惑するの?キャーッ!アイゼンちゃんたら大胆!!」 「……ウザッ…」 いきなりヒョッコリ、とアイゼンのバックをとりつつ天使の如くの笑みをむけるシャドウ。 ちょっと何勝手に来てるのよ! 貴女は邪魔だからクリナーレ達の所に居てよ! それにアイゼンに迷惑かけないで! あからさまに嫌がれてるよ! ていうか、ハッキリと『ウザッ』って言われたから! このKYシャドウ! 「『KYシャドウ』って言うけど、自分の事も言ってるんだよ。半分アタシなんだから♪」 「キィーーーー!!!!黙らっしゃい!」 「まあまあ、落ちついて」 「そうですよー」 シャドウに掴みかかろうとした私をサラと犬子さんが左右から掴み止める。 はっ私とした事が取り乱してしまいました。 いけない、いけない。 「そうそう、冷静になるのよ♪クールになれアンジェラス♪♪」 「その台詞は某アニメの著作権に触れそうだから言うな」 「硬いこと言いっこなし~♪」 ウザイ…本当にウザイ。 殴り飛ばしてやりたい。 そんな衝動にかられてると犬子さんが。 「とりあえず、先生役をどのように決めるかを考えましょう、なるべく公平な方法で」 「まぁ、それなら」 「……意義無し…」 犬子さんが建設的な意見を出してくれました。 正直な話、助かりますー。 というかスミマセン。 このパチモン私の所為で話しを進める事ができなくて。 サラと犬子さんが私から離れ、また最初の陣形になる。 「それで、公平な決め方とは?」 サラが犬子さんに質問すると犬子さんは困った表情になり、そして重々しく口を開いた。 「いえ、そこまではまだ考えていませんが」 「…やっぱし……」 サラの質問にあっさりと答える犬子さんに、ツッコミを入れるアイゼン。 意外とアイゼンって容赦ない? 「申し訳ありません……といいますか、何故私が謝っているのでしょう?」 律儀に謝る犬子さん、でも最後の言葉に疑問を言う。 ええぇ、それは正しい言い方だと思いますよ。 でも公平の決め方かぁ~。 実際に公平な決め方と言われてもそう簡単に出てくるものでじゃないし。 一応、この面子で話しをしてみましょう。 一方、その頃のオーナー達は。 龍悪の視点 「あいつ等、いったい何やってんだが…」 その後に『はぁ~…』と溜息をつく。 今までの一部始終を見ていてドキドキハラハラさせられてきたもんな。 オマケにシャドウも出てくるし。 でもシャドウもこの企画を楽しんでるみたいだし、殺伐みたい事はしないだろう…多分。 一時はどうなるかと思ったけど。 あ、それと。 「スマンな、島田君。シャドウの所為でアイゼンに迷惑をかけてる。謝る」 「あ、いえいえ。あの時のバトルは驚かせれましたが、今はアイゼンと仲良くやってると思います」 「…アレ、本当に仲良くしてるかな。ただたんにアイゼンにウザイと思われてるだけと思うんだが。あ、それとアイゼンが先程言ってた、『誘惑』についてだがー、何かあったのか?」 「エッ!?あ、あれはーそのー…スミマセン」 「何で謝るんだよ」 「ちょっとその話しはー…」 「あ、なんとなく解った。いいよ、言わなくて。誰にでも喋りたくない事なんてあるもんさぁ」 「そうですね」 喋り終わった後、二人で一緒に溜息を吐いたのは言うまでもない。 そして戻って神姫の方。 アンジェラスの視点 「…はぁ~なかなか決まりませんねー」 「…もう何でもいいでしょう。頭にコップを乗せて一番長く落とさなかった人の勝ち、とか」 私が言った事に相づちうちながら言うサラ。 にしても困りました。 色々な案が出ましたが、あーでもないこーでもない、と皆言ってどっちつかずになってしまい、結局の所決まってない。 『あみだくじ』『多数決』『じゃんけん』その他もろもろ…って、そんなに無いんですけどね。 でもこのままでは埒があきません。 時間も結構経ってしまったし…。 「そんなに悩んでるなら『じゃんけん』でやればいいのに♪」 再びヒョッコリ、と顔を出すシャドウ。 このお邪魔虫をまずどうにかするのが先決かな? 「まぁまぁ、そう怒りに身をまかせちゃダメよ。アタシが何故『じゃんけん』を選んだか分かる?」 「分からない」 「分かりませんね」 「………」 「申し訳ありません、判りかねます」 一斉に『分からない』コール。 アイゼンだけは顔を左右に振ってジェスチャーする。 するとシャドウが何気ないセクシーポーズの格好しながら。 「私達は何で出来ている?『身体は素体でできている』なんて答えた人には、エクスカリバーをあげる♪」 「だからそういうネタは止めなさいって、ていうか、そういうのどっから覚えてくるのよ」 「マスターのパソコンにインストールされてるエロゲーから閲覧したの♪」 「…あっそー、で結局の所何が言いたいのよ」 「私達は武装神姫。人間より細かく動作を見れるじゃない。故に誰が『後だし』したか分かる、という事よ♪」 あーなるほど、確かにそうですね。 人間の反応速度と武装神姫は違います。 神姫同士ならバトルで鍛えられた反射神経みたいのが作動して瞬時に動くはず。 これなら『じゃんけん』でも構わないかもしれませんね。 「それを言うならばシャドウさん、一つ疑問があるのですが」 「はい、そこのプリチーな犬子さん。何かな?くだらない事言ったら、もれなくアタシからR‐18の世界に連れて行くプレゼントをあげる♪」 「疑問一つ挟んだだけでそこまでリスクを負わねばならないとは、どこの圧政地区ですか」 「はい、そこでチャカさないの」 ポカっとシャドウの頭を叩く。 まったくこのシャドウはマジでどうにかなんないかな。 いっその事、何かに頭を打ち付けて死ねばいいのに。 「冗談、冗談よ♪で、何?」 「あの、私たちは今現在、このヴァーチャル世界で能力制限されていて、通常の人間と同じ程度の能力しか発揮できないはずです。当然、反応速度も」 「ん~…やっぱりくだらない質問だね。そんな犬子さんにR‐18指定世界に突入♪」 「い、いえ貴女先ほど、冗談と仰っていたはずですが」 犬子さんは、じりじりと後ずさりしながら答えた。 さすがの私も『仏の顔も三度まで』です! 「いい加減にしなさい!」 今度はグーでシャドウの右を殴り犬子さんを助ける。 というか殴り飛ばしってやった。 殴り飛ばされたシャドウは勢いよく机と椅子を巻き込みながらゴロゴロと転倒する。 これ以上犬子さんに迷惑かけるなら本気で潰すよ! 「も~、容赦ないなぁ~アタシの半身は。分かったわ、ちゃんと説明するからカッカしないで。犬子ちゃん、アタシを誰だと思う?」 殴りとばされたのにも関わらず涼しそうで平気な顔しながら起き上がるシャドウ。 やっぱり、あの程度じゃダメなのね。 「は?ええと、アンジェラスさんのシャドウだとお伺いしましたが」 「正解♪そしてアタシはこのヴァーチャル世界、基、この筐体システムを掌握してるのよ。つまり『じゃんけん』する時だけ本来の皆の反応速度を元に戻す事ぐらい造作もないって事よ」 「…チート野郎……」 「あら、可愛いアイゼンがそんな乱暴な言葉を使っちゃだめよ♪因みに女に向かって言っているから『チート野郎』じゃなくて『チートアマ』って言わないと♪♪女に対しては『アマ』だから♪♪♪」 さりげなくアイゼンが嫌味を言った。 それをどうでもいい事でシャドウが訂正する。 訂正するのは良いとして、文句言われてる事に腹立たないのかな。 まぁ常に機嫌を良くしてるみたいだからいいか。 「では、やりましょうか?」 「…やる」 サラとアイゼンはもうじゃんけんの構えをとっていた。 「最後に負けた人が先生役をそれでいいね!」 私がそう言うとサラ達が無言で頷く。 よし、準備は整った。 あとは運のみ! 「いくよー!じゃんけん!」 パーを出す チョキを出す グーを出す 銃を出せばいいんじゃないの